Chapter1

「ごめん、あとで必ず聞く。すぐ戻る」
 話の途中で、クラウドはそう言って外に出ていった。本降りになってきた雨も、意に介さない。

 ティファはさすがに腹が立った。

 仕事から帰宅したクラウドに、セブンスヘブンのある常連客について相談をした。ミッドガルからエッジへの廃材運びを生業としている壮年の男性なのだが、アルコールが入ると人柄が変わってしまう。言葉使いに品性がなくなり、ティファに絡むようになる。飲み代はきちんと払ってくれるし、普段は紳士的なだけに、無下にも扱えない。どうしたらよいものか、と。

 クラウドは腰をおろし、きちんと聞く素振りをみせたが、すぐに中座して部屋から飛び出してしまった。外から雨音にまじって愛用のバイク、フェンリルをいじる音が聞こえる。おそらく、仕事帰りにうまい改造でも思いついたのだろう。

 このところ、クラウドはバイクの改造に傾倒していた。バイクいじりは昔から好きだったが、以前よりも相当のめりこんでいるようだ。ティファや子供達と話をしていても、目がぼんやりしている。明らかに、頭の中で何かを考えているふうだ。はじめは一体どうしたのだろうと心配になったが、それがバイクのことだとわかると、安心した。深刻なことでは無い、良かった。微笑ましく思ったが、あたたかい気持ちになれたのも最初だけだった。クラウドは時間が出来ると、部屋の片付けもまともにせず、バイクばかりいじっているのだ。目に入るのは、クラウドの背中ばかり。

 クラウドの出て行った扉をティファはじっと見つめていた。話を放り出して外に出たクラウドに対し、ティファは激しく憤った。

 真剣に相談していたのに!

 近頃、クラウドとの会話が減ってストレスが溜まっていた。クラウドはバイクいじりで発散できるのだろう。ひとりで趣味に没入することがあまり無いティファにとっては、クラウドの熱の入れように呆れてしまう。男はみんなこうなのだろうか。パートナーが寂しがっているのに、気づきもしない。

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