Chapter1

 常連客にこの話題を振ったところ、他の女に夢中になられるよりいいじゃないか、と笑われた。「男にとって趣味は仕事や家族と並ぶくらい大切なものなんだよ」。それは確かにそうなのだろう。理解はしてあげたい。けれども、共感はできない。

 ティファにとっては、クラウドがいちばんなのだ。クラウドのためなら趣味などいらない。服装も、クラウドがいい顔をしなかったので、露出の少ないものにかえた。自分にとって、クラウドがすべての中心だ。もちろんマリンやデンゼルも大切な家族だ。だけど、クラウドにはかなわない。クラウドのいちばんは、わたしではないのか。2年以上も一緒に暮らしていれば、気持ちも薄れるものなのか。薄れたのではなく、慣れただけ。そう言われるのはわかっているけれど。

 ギィと音がした。雨に濡れたクラウドが部屋に入ってきた。
「あ、話の続きだけど・・・」
 声色が、言い訳をするような響きだった。ティファはさえぎるように言った。
「もう、いいよ」
 クラウドは一瞬だけ間の悪い顔をし、ティファを見た。
「わかった」
 そう言って、また外に出ていった。

 クラウドの心理が透けて見えた。
 面倒だけど、ティファの話も聞かないとな。

 本当に、わかりやすい。ティファにはクラウドの心の動きが把握できる。抑えのきかない子供っぽさがあるので、本人も知らないうちに感情が表に出ているのだ。

 悲しい。一緒に暮らしはじめた頃、クラウドはもっと優しかった。今も冷淡になったわけではないが、あの頃はティファを中心に物事を考えてくれた。愛情が冷めたのだろうか。違う、そんなことはない。そんなことは、ないと思うけど・・・。

 いやな考えが、浮かんでしまう。他の男の人って、どうなんだろう。やっぱり、みんなクラウドのように、趣味に没頭してしまうのだろうか。聖痕の事件でクラウドが家を出たときも、こんなことは思わなかった。あのときは何もかもが手一杯で、気持ちに余裕が無かったからかもしれない。

 クラウド以外の人と、つきあったとしたら?

 ティファは首を振った。なんてこと考えてるの。マリンやデンゼルのためにも、そんな馬鹿なこと考えちゃいけない。

 それでも、一度心にあらわれた悪魔は、テイファを誘い続ける。


back next
text top
SEO対策 ショッピングカート レンタルサーバー /テキスト広告 アクセス解析 無料ホームページ ライブチャット ブログ